日本男子体操チームの相互応援はZ世代そのもの

オリンピックの男子体操の選手は互いに肯定し、ポジティブな言葉を掛け合う応援の仕方をしていた。それはまさにZ世代の方法だった。

オリンピック日本男子体操チームの応援風景に見たZ世代の特徴

2024年パリオリンピックで日本の男子体操チームは団体戦で金メダルを取りました。最後の鉄棒で1位だった中国を僅差で逆転したのです。その演技には感動しました。一方で私は彼らが他の演者の演技中に行う応援の仕方に若干の変化を感じました。そしてその要因は彼らが全員Z世代だったからではないか、という結論に至りました。

彼らは全員が肩を組み、それぞれ大声で演者に対して声援を送るのです。その「肩を組む」こと。その声援内容が「気合を入れる」系ではなく「自分たちは仲間だ」系だったのです。具体的には「大丈夫だ!」「お前ならできるぞ!」「リラックスして行こう!」といった、非常にポジティブなワードでした。

オリンピックの選手間の応援風景にZ世代の特徴が明確に表れている

私はそれを見て「ああ、確かに彼らはZ世代の選手たちなんだな」と思いました。そして彼らのコーチのZ世代型指導を想像し陰ながら労をねぎらいました。

このオリンピックの男子体操の相互応援はZ世代社員の育成の参考になります。若手社員を抱える企業がZ世代をどう育成、指導して行くべきか。オリンピックの事例を踏まえご提案します。

本当に今回の選手はZ世代なのか

応援は「自分たちはお前を受容している・肯定している」とZ世代バージョン

私は全く熱心なオリンピック観戦者ではありません。しかし過去の男子体操では、今回のような応援風景は見たことがありません。多くの場合は、まず選手は個々に試合を見ています。そして声援するにしても個人として行っていました。また、応援内容は非常にストイックで、ある意味「指示的」でした。たとえば「落ち着け!」「気合を出せ!」「あきらめるな!」と言った命令的な文言です。

しかし今回はまず声援の文言が宥和的だったのです。具体的には「お前ならできるぞ!」「ドンマイ!」「俺たちがいるぞ!」など、「チームが各選手を受容している」ことを声援で送っているのです。その受容的な文言を、泣き叫びに近い必死さで伝えているのです。その違和感も感じました。しかし最大の点は「お前をチームは受容する」という肯定メッセージだと言うことです。

選手のプロフィールを確認すると見事に全員Z世代

この応援内容が余りにZ世代的でしたので、私は改めてメンバーの生年を確認しました。具体的には以下の通りです。

  • 谷川航選手: 1999年生まれ、25歳
  • 北園丈琉選手: 2000年生まれ、24歳
  • 田中佑典選手: 2001年生まれ、23歳
  • 加藤凌平選手: 1999年生まれ、25歳
  • 中田大輔選手: 2002年生まれ、22歳

Z世代の基本的定義は「約1995年から2010年までに生まれた」ということです。いかがですか。見事に今回の5選手は全てZ世代である、と言うことが確認できるでしょう。

つまり今回の行動は明確にZ世代の特徴の表出なのです。それは日々接するZ世代の社員の行動原理を理解する上で非常に参考になります。さらにその特徴に対してどう対処すればいいかも教えてくれます。つまりZ世代の育成。Z世代のモチベーションアップ。Z世代の戦力化。そういうことのヒントが詰まっているのです。

そこで以下では、まずZ世代の特徴を確認します。そして自社のZ世代をオリンピック事例を参考に育成する方法をお伝えします。

Z世代の特徴とは

Z世代とは、1990年代半ばから2000年代初頭に生まれた世代を指します。彼らのメンタル面やモチベーションに特化した特徴として以下の点が挙げられます。

1 認め合い、助け合う関係性を好む

彼らは協力的な環境を重視し、互いに支え合うことを大切にします。

2 価値観が合わない仕事や組織とは距離を置く

自分の価値観と一致しない環境では力を発揮しにくく、モチベーションが低下します。

3 スペシャリストを目指す志向が強い

自分の専門分野での卓越性を追求し、スキルを磨くことに熱心です。

4 集団から排除されることを極端に恐れる

集団に受け入れられることに強い不安を感じ、孤立を避けようとします。従って彼らは集団の中で、空気を読み、同化し、目立たないようにしています。なぜなら異分子は排除されやすいからです。

5 自己承認欲求が強い

しかし一方で非常に承認欲求は強いのです。その意味では組織の中で確固としたポジションをゲットしたいと考えています。また同時に自己評価は高く、問題の指摘や否定的なフィードバックには反抗します。あるいはモチベーションを落とします。

6 メンタルタフネスが低く、すぐに傷つく

彼らは自分がどうありたいか、よりも他人から見てどう映っているのかを気にします。他者からのネガティブなメッセージ、無視されること、集団から排除されること。これらなどのストレスには非常に耐性が低いです。同時にそれはプレッシャーにも弱いと言うことです。

Z世代の特徴は数字にも表れている

以上の点は各種の統計調査からも確認できます。

メンタルヘルスケアの重要性

Z世代の70%以上がメンタルヘルスの重要性を認識しています。日常的にメンタルヘルスケアを実践しています。【出典:2024年メンタルヘルス調査(日本メンタルヘルス協会)】。

自己承認欲求に関する意識調査

Z世代の約80%がポジティブなフィードバックを求めています。【出典:2024年意識調査報告書(株式会社リクルート)】。

価値観の一致の重要性

Z世代の65%が、価値観の一致が会社選択の上で最も重要だと答えています。【出典:2023年キャリア調査(株式会社マイナビ)】。

協力的な環境の必要性

Z世代の60%以上が、協力的なチーム環境がパフォーマンス向上につながると考えています。【出典:2024年職場環境調査(日本労働研究機構)】。

Z世代の特徴に対応した育て方

ではZ世代のメンタル面やモチベーションの特徴に適した育成方法?マネジメント法はどのような点を押さえるべき?といったことを考えましょう。

Z世代同士で互いにどのようにモチベーションを上げていたか

再度、男子体操選手のモチベーションの相互向上の内容を確認します。

まず各選手の得意分野を生かしながら、互いに補完し合う姿が見られました。しかし、試合中に谷川航選手が鉄棒の演技でミスをしてしまう場面がありました。このような状況で、チーム全体の反応が非常に参考になります。

谷川選手が鉄棒から落下しても、チームメイトが彼に駆け寄ることはできません。また規定で許されていてもしなかったでしょう。なぜなら演技中の選手に恥をかかせてしますからです。

そこで彼らがとった行動は、待機スペースから大声で声援を送り続ることでした。肩を組んで「大丈夫だ、次は俺たちがカバーするから」と力強く声を挙げました。ポジティブなメッセージを送り続けました。

失敗した仲間を責める代わりに、次にどう繋げるかを考えました。、ポジティブなフィードバックをしたのです。

この一体感と「協働」協力の姿勢が、最終的に逆転金メダルにつながりました。

会社におけるZ世代の育成

それでは以上のオリンピックの事例から学ぶことのできる、会社におけるZ世代の若手社員に対する接し方と育成上の留意点について、挙げてみましょう。

相互支援と相互肯定の文化を構築する

Z世代は肯定し合い、助け合う関係性を重視します。職場においても、相互に支え合う文化を醸成することで、彼らのモチベーションを高めることができます。具体的には、チームビルディング活動やピアフィードバックの仕組みを導入し、互いに認め合う機会を増やすことが効果的です。

価値観の一致を尊重し、互いに肯定できることを目指す

Z世代は価値観の一致を非常に重要視します。彼らの価値観に合ったプロジェクトや目標を設定し、共感を得ることが求められます。例えば、環境に配慮した取り組みや社会的な意義のあるプロジェクトに参加させることで、彼らのエンゲージメントを高めることができます。

専門分野での成長を支援する

Z世代はスペシャリスト志向が強いです。彼らが専門分野で成長できるよう、トレーニングや学習機会を提供することが重要です。また、自己成長を重視する姿勢をサポートし、キャリアパスの明確化を図ることも必要です。

メンタルヘルスケアを重視し自己肯定感を持てるようにする

メンタルタフネスが低いZ世代に対しては、ストレス管理やメンタルヘルスのサポートが不可欠です。定期的なメンタルヘルスチェックやカウンセリングの提供、リラクゼーションのためのプログラムを導入することで、彼らが安心して働ける環境を整えます。

ポジティブで肯定的なフィードバックの提供

Z世代は自己承認欲求が強く、肯定的なフィードバックを必要とします。彼らの努力や成果を適切に評価し、ポジティブなフィードバックを送ることで、自己効力感を高めることができます。

結論~Z世代はこう育てよう

オリンピック男子体操を通じて見えるZ世代の特徴は、彼らの成長と成功のカギを握るヒントを提供しています。認め合い、助け合う関係性、価値観の一致、スペシャリスト志向、集団への所属意識、自己承認欲求、メンタルタフネスといった特性を理解し、それに応じた育て方を実践することで、彼らの可能性を最大限に引き出すことができるでしょう。

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