会社をいつ大きなトラブルが襲うか誰にも予測できません。そのリスクヘッジ、対応シミュレーションをしている企業はほとんどありません。


私たちは仕事でも日常生活でも、物事のメリットや良い効果を考えてしまいがちです。しかしそれは非常に危険なクセです。なぜなら「自分の会社が大きな危機に直面する」「自分や自分の家庭が大きなトラブルに巻き込まれる」という可能性を頭に入れていないからです。

もしもあなたが会社、家庭など「1つの組織をマネジメントする」立場ならば、チャンスを掴むこと(攻め)と同時に、リスクを避けること、起こった場合の対処を考えておくこと(守り)、は非常に重要です。

ここではあなたの会社様を「攻め」「守り」ができる組織にするご提案をしましょう。

フラット型組織の前はピラミッド型組織だった

高度成長期は「単一ニーズ」対応ができれば業績は上がった

1970年代半ばまで続いた「高度成長期」。日本のサラリーマンの給与は、毎年高い水準で上昇していました。そして給与水準に合わせて生活レベルも上がって行きました。

たとえば1960年代後半は「3C」といって「自家用車(Car)」「冷房機(Cooler)」「カラーテレビ(color TV)」が豊かさの象徴として、どの家庭でも争って買い求めました。

このような時代は「ともかくカラーTV」を作っておけば、あとは商品力ではなく販売網の強さで売れて行きました。つまり市場ニーズは極めて「単一的」だったのです。

高度成長期はみな同じものを買った。

ピラミッド型組織。

「上からの指示の徹底」にはピラミッド型組織が最適

この時代の組織の原理は「考えるのは上に任せて、とにかく動け!」でした。営業、販売、生産の現場は指示通りに徹底して実践すれば評価されました。

そのために5~6人を1つの組織として管理し、その組織を5~6つ集めてまた管理し、という方法採用されました。この、社長から現場まで何層も管理職がいるピラミッド型組織が最も効率的だったのです。

市場の多様化に対応できないピラミッド型組織

ひと通りものが揃うと市場心理は変化する!

しかし1980年代になると「モノ余り」という言葉が生まれました。つまりカラーTV、自動車、クーラーはほぼ全ての家庭に行き渡り、消費者は自分の「好み」で物を買うようになったのです。

これによって市場ニーズは「多様化」に向かいました。

「家族それぞれ見たい番組が違うので、自分用の小さなTVが欲しい」。「家でも映画館に匹敵する大画面でTVを見たい」。というようなことです。

このように「カラーTV」1つ取っても、市場のニーズは多様化、細分化しました。「人と違った個性を出したい」「自分のこだわり心を満たすものを持ちたい」という消費者心理が生まれたのです。

いわば「満ち足りた後の差別化志向」です。

これを「市場の多様化」と言います。

1980年代から市場は多様化した。

ピラミッド型組織では情報伝達速度が圧倒的に遅く、市場チャンスを逃し、問題の小さいうちに対応することができない。

情報伝達が遅いピラミッド型組織

多様化する市場に対して、現場と社長などの間に階層が多い「ピラミッド型組織」は対応できません。

なぜならまず大前提として「市場・顧客の変化」を社内で1番先に感じるのは、顧客や販売店と接する現場の社員です。そして物事を判断し、決めるのは1番市場から遠い経営トップです。

ですから現場の社員が「市場の多様化、変化」を感じて上司に報告しても、その上司は自分の上司に報告するだけです。そしてその上司は自分の上司の部長に報告し、部長が役員に報告して…。社長の耳に入るのははるかに時間が経ってからです。それでもまだいい方で、途中で情報の価値の分からない管理職がそれを握りつぶす可能性もありました。

多様化する市場にピラミッド型組織は対応できない

このようにピラミッド型組織の情報伝達は「伝言ゲーム」です。ピラミッド型組織は特に「伝言ゲーム」の参加者多いのです。そのためどれほど新鮮な情報でも、ピラミッドを1つ1つ登って社長に届くころには、とっくに陳腐化してしまいました。

さらに伝言ゲームをしている間にも市場は変化し続けます。つまり社長が知った情報は何世代も古いものだったのです。

その古い情報を元に社長が経営判断をし対応を指示します。それはまた階層を1つ1つ降りて行って現場に届きます。その時には指示は全く時代と市場とかけ離れた「的外れ」のものになっていました。

こうして「ピラミッド型組織」は「自社が対応するべき大問題」に対応できず、その組織を維持していた企業の業績はみるみる下がって行ったのです。

多様化し、変化の激しい時代に「伝言ゲーム」は役に立たない

多様化した市場対応にはフラット型組織!

フラット型組織。

フラット型組織とは

この「ピラミッド型組織」の欠点をクリアするために生れたのが「フラット型組織です。その定義は以下の通りです。

  • 社長以下の管理職を極力減らした組織
  • 社長と末端の社員との階層が少なく、組織図を作ると平坦(フラット)に見える

これからの時代は「フラット型組織」でなければ乗り切れないと判断した会社は、次々に「ピラミッド型組織」から改組していきました。

つまり、多様化し変化する市場に即応するには「フラット型組織」が必須なのです。

フラット型組織のメリット

このように多様化する市場に対応して「フラット型組織」になった理由は以下の通りです。

  • トップマネジメントと現場との情報伝達のスピードが早くなる
  • 社員個々の主体的な思考、自発的な行動が発生する。結果的に社員育成にもつながる
  • 経営層が市場や経営環境の新鮮な変化を素早く知り、最適な対応ができる
  • 組織の風通しが良くなる
  • 特に若手社員のやりがいが引き出せる

つまり、多様化し変化する市場に即応するには「フラット型組織」が必須なのです

早く社長に報告だ!

しかし「フラット型組織」がどのような状況でも通用する、ということはありません。「ピラミッド型組織が必要な状況」もあるのです。これは組織改革を売るコンサル会社が理解していない点です。