人材育成こそ、目先の売上だけ追って来た会社がまずするべきこと

目先の売上を追わずに人材育成をすることが企業の長期的成長のカギ。

かつて「人は城」と言う言葉が経営者の口から出ていました。つまり人材育成が企業の礎という信念です。しかし、現在は他社の真似だけである程度、売上が稼げ、そのような信念は希薄化しています。

一方、現在の日本は全体で見れば絶好調です。過去最高益を出している企業が続出しています。評論家や記者が、円安を「日本の経済が弱い」証拠などとバカなことを言っています。しかしこれは単にアメリカとの金利差が原因なだけです。むしろそのために輸入型企業はそのために潤っていると言えます。

しかし一方で、輸出型の中小企業は苦戦しています。このような会社は、今の事業をそのまま続けても将来は絶対に見えません。ですからするべきことは、イノベーションと人材育成です。

ところがそういう企業に限って、目先の売上を追っている場合がほとんどです。そこでここでは、目先の売上だけを追って来た企業が人材育成を始める場合、何から手を付ければいいのかと言う点について解説します。

はじめに

現代のビジネス環境では、企業の成功は社員のスキルと能力に大きく依存しています。しかしどこから人材育成を始めるべきかは分からない企業の多いでしょう。そこで人材育成の重要性と、最初に取り組む具体的なステップについて説明します。

人材育成の重要性

人材育成は、企業の長期的な成功と持続的な成長を支える重要な要素です。現代のビジネス環境は急速に変化しています。新しい技術や市場のトレンドに対応するためには、社員がポイントです。社員が常に最新のスキルと知識を入手できる体制を作る必要があります

経営者にとって、目の前の売上を追いかけることは重要です。しかし長期的な視点で企業の成功を考えると、人材育成に投資することが不可欠です。社員のスキルと知識を向上させること。それが企業の競争力を強化し、持続的な成長を実現することができます。人材育成に注力することで、企業の未来はより明るく、安定したものになるでしょう。

具体的な数字から見てもそれは明らかです。

  1. 76%の社員が継続的な学習と発展の機会がある会社にとどまりたいと考えています 。
  2. 51%の人事マネージャーが、社員のスキルアップには社員教育が最良と述べています。
  3. 90%の開発マネージャーは学習と開発(L&D)が生産性と発展に貢献すると信じています。

人材育成に注力すべき理由

ではまず、なぜ人材育成に力を入れるべきかご説明しましょう。その理由は以下の5つです。

1. 競争力の強化

企業が競争力を持つには、社員が高いスキルと専門知識を持っていることが不可欠です。人材育成によって社員は新しい技術を習得し、企業の競争力強化に貢献します。これは短期的な売上だけを追求するのではなく、長期的な競争優位性をもたらします。

2. イノベーションの促進

イノベーションは企業の成長と成功に欠かせない要素です。社員が学び成長すれば、新しいアイデアや革新的な問題解決策が生まれやすくなります。人材育成は、社員が創造力を発揮し、企業がイノベーションを起こす基礎です。3. 従業員の満足度とエンゲージメントの向上

社員が自分のキャリアやスキルの向上に対してサポートを受けていると感じると、モチベーションやエンゲージメントが高まります。人材育成は、社員の仕事への満足度を高め、離職率を低減させる効果があります。結果として、企業は経験豊富で忠実な社員を維持することができます。

4. 業務効率の向上

研修や教育を受けた社員は、業務をより効率的に遂行することができます。最新のスキルや知識を持つことで、業務プロセスの改善やエラーの減少が期待できます。これにより、全体の業務効率が向上し、企業の生産性が増します。

5. リーダーシップの育成

企業が持続的に成長するためには、次世代のリーダーを育成することが重要です。人材育成プログラムは、将来のリーダーシップ候補者に必要なスキルや知識を提供し、組織の持続可能な成長を支えます。

最初に取り組むべきステップ

1. 現状分析

現状分析は、社員のスキルと業務の現状を把握するための最初のステップです。

  • スキルマトリックス(Skill Matrix)の作成
    • 各社員の現在のスキルレベルを一覧表にまとめます。スキルマトリックス(スキルの一覧表)を使用して、どのスキルがどの程度備わっているかを視覚的に把握します。
    • 例: Excelのスキル、プロジェクト管理、コミュニケーション能力など。
  • 業務評価(Performance Evaluation)
    • 各社員の業務パフォーマンスを評価します。業務評価(仕事の成果の評価)は、上司の評価、同僚からのフィードバック(他者の意見)、および自己評価を組み合わせることで行います。
  • 360度評価(360-Degree Feedback)の実施
    • 360度評価(多面的なフィードバック)は、社員の上司、同僚、部下からのフィードバックを含む総合的な評価方法です。これにより、社員の強みと弱みを多面的に把握できます。

2. 課題の特定

現状分析を基に、社員のスキルと業務の課題を特定します。

  1. ギャップ分析(Gap Analysis)
    • スキルマトリックス(スキルの一覧表)と業務評価(仕事の成果の評価)を基に、理想のスキルセットと現在のスキルセットのギャップ(差異)を分析します。このギャップが課題となります。
    • 例: プロジェクト管理スキルが不足している、新しい技術に対する理解が不足しているなど。
  2. 業務プロセスのレビュー(Process Review)
    • 現在の業務プロセス(仕事の手順)を詳細にレビュー(見直し)し、効率化や改善が必要な箇所を特定します。

3. 優先順位の付け方

  • 特定した課題に対して、優先順位を付けるための具体的な方法です。

ビジネスインパクトの評価(Business Impact Evaluation)

何を評価するのか

ビジネスインパクトの評価とは、特定の活動やプロジェクトが企業全体にどのような影響を与えるかを判断することです。例えば、新しい研修プログラムを導入することで売上が増えるのか、コストが減るのか、顧客満足度が上がるのか、といった影響を評価します。

ビジネスインパクトを評価するためのステップ
1. 目標を設定する

まず、何を達成したいのかを明確にします。例えば、「新しい研修プログラムで従業員のスキルを向上させる」といった具体的な目標を設定します。

2. 現状を理解する

現在の状況を理解するためにデータを集めます。例えば、現在の売上、コスト、従業員のスキルレベルなどを確認します。

3. 影響を予測する

次に、その活動やプロジェクトが企業にどのような影響を与えるかを予測します。例えば、新しい研修プログラムを導入すると、売上が10%増えるかもしれない、というように予測します。

4. コストと利益を比較する

その活動にどれくらいの費用がかかり、それによってどれくらいの利益が得られるかを比較します。例えば、研修プログラムに100万円かかるけど、売上が200万円増えるなら、利益が100万円になるという計算です。

緊急度の評価(Urgency Evaluation)

緊急度の評価は、課題や問題に対処する優先順位を決定するための重要なステップです。以下の基準に基づいて緊急度を評価することが効果的です。

1. ビジネスへの影響度
  • 直接的な業績への影響: 課題が解決されない場合、売上や利益にどの程度の影響を与えるかを評価します。直接的な影響が大きいものは、緊急度が高いと判断されます。
  • 顧客満足度への影響: 顧客の満足度にどの程度影響を与えるかを考慮します。顧客満足度が低下する可能性が高い場合、その課題は優先度が高くなります。
2. 時間的な制約
  • デッドラインの有無: 特定の期限が設定されている課題は、期限に間に合うように優先的に対処する必要があります。
  • 時間的緊急性: 課題の解決が遅れることで発生するリスクや損失を評価します。遅延によるリスクが高い場合は、緊急度が高いとされます。
3. リスクの評価
  • リスクの深刻度: 課題が未解決のままである場合に発生する可能性のあるリスクや問題の深刻度を評価します。例えば、法的な問題や安全性に関わる課題は優先度が高くなります。
  • リスクの発生確率: リスクが発生する可能性の高さも考慮します。発生確率が高い場合、その課題は緊急度が高いと判断されます。
4. 組織の戦略目標との一致
  • 戦略的な重要性: 組織の戦略目標やビジョンにどの程度関連するかを評価します。戦略的な目標に直結する課題は、緊急度が高いと見なされます。
  • 長期的な影響: 短期的な影響だけでなく、長期的な影響も考慮します。長期的な成長や発展に重要な課題は、優先度が高くなります。
5. リソースの可用性
  • リソースの必要性: 課題の解決に必要なリソース(時間、人材、資金)がどの程度確保できるかを評価します。リソースが限られている場合、リソースの利用効率を最大化するために優先度を決定します。
  • リソースの配分(Resource Allocation):利用可能なリソース(資源:時間、人材、予算)を考慮し、どの課題にどのリソースを配分するかを決定します。
    6 フィードバックループの確立(Feedback Loop Establishment)

    優先順位を付けた後も、定期的にフィードバック(他者の意見)を収集し、必要に応じて優先順位を見直します。

    人材育成!まずここから始めよう!

    1 目標設定

    次に、具体的な目標を設定します。例えば、「半年以内に全社員のITリテラシーを向上させる」や「1年以内に営業スキルを強化する」といった具合です。

    2 OJTの導入

    次に、OJT(On-the-Job Training、職場内訓練)を導入します。OJTは、実際の業務を通じて必要なスキルを習得するための訓練方法です。

    OJTを現場で実施する手順

    効果的にOJTを実施するための順序とポイントは以下の通りです:

    1. 計画の策定
    • 目標の明確化: OJTの具体的な目標を設定します。例えば、「新入社員が3ヶ月以内に独立して業務をこなせるようにする」などです。
    • トレーニングプランの作成: どのようなスキルを、どの順序で、どのように教えるかを計画します。具体的なタスクやスケジュールを設定します。
    2 メンター制度の導入

    メンター制度は、組織内で新入社員や若手社員がより経験豊富な上司や先輩社員(メンター)から指導や助言を受ける制度です。主な特徴や目的は以下の通りです:

    経験と知識の共有:

    メンターは自身の経験や知識を、メンティー(指導を受ける側)に対して共有します。これにより、新入社員や若手社員はより迅速に成長し、組織文化や業務のベストプラクティスを理解することができます。

    キャリアの支援

    メンター制度は、メンティーのキャリア発展をサポートすることを目的としています。メンターは、キャリアの方向性やスキルの向上についてのアドバイスを提供し、成長の機会を提供します。

    関係性の構築:

    メンター制度は、組織内の異なる部門や階層間での関係を強化する役割も果たします。メンティーとメンターは個別に時間を共有することで、より深い信頼関係を築くことができます。

    問題解決と学習の促進:

    メンター制度は、メンティーが業務上の課題や問題に対処する際にも役立ちます。メンターは経験に基づいたアドバイスやアイデアを提供し、学びと成長を促進します。

    3. 実施
    • OJTの効果的な実施方法
      • 具体的な例を用いる: 理論だけでなく、具体的な例や実際の業務シナリオを用いて教える。
      • 反復練習: 重要なスキルは繰り返し練習させる。
      • 双方向のコミュニケーション: 新入社員が質問しやすい環境を作り、双方向のコミュニケーションを促進する。
    • フィードバックの提供: 定期的に進捗を確認し、適切なフィードバックを提供します。新入社員が理解しているかどうかを確認し、必要に応じて修正します。
    4. 評価と改善
    • パフォーマンスの評価: 新入社員のパフォーマンスを評価し、目標が達成されているかを確認します。
    • 改善点の特定: OJTの効果を分析し、必要に応じてトレーニングプランを見直します。
    5 OJTのために先輩社員の業務効率が落ちた場合の対処法
    • 業務の再分配: メンターが指導中に他の業務が滞らないように、チーム全体で業務を再分配します。
    • 時間の管理: OJTの時間を計画的に管理し、他の業務に支障が出ないように調整します。
    • 補助メンターの活用: 複数のメンターを活用し、負担を分散します。
    • 外部リソースの利用: 必要に応じて外部の研修プログラムやオンラインコースを補完的に利用し、メンターの負担を軽減します。

    まとめ

    これからの変動の激しい世界市場で生き残るためには、まず、他社では作れない製品、あるいは製造技術などの「イノベーション」の実現。そしてそれを行うためには優秀な「人材」。この2つが必須です。

    今、どれにも手を付けていない、と言う場合には、まずここでご紹介した「人材育成」から始めてみましょう。

    しかし、やはりどうやって手を付ければいいか分からない、やってみたがうまくいかない、工数ばかり取って成果が出ない、と言うような理由で困っている方は、ぜひ私たちにここからご相談ください。御社に合った方法で、どのように進めればいいのか、と言う点について、実際に一緒に行動しながら、サポートいたします。