仕事の目標を思い付かない部下。何をすれば解決するのか?

仕事の目標がないと、本人の成長だけではなく会社の発展も停滞してしまいます。

Ⅰ はじめに~「目標を持つ」のが困難な若手、中堅社員たち

「仕事の目標が思い浮かばない」――そんな悩みを抱えるビジネスパーソンは、決して少なくありません。特に若手社員に多く見られるこの傾向は、企業にとって深刻な問題です。なぜなら、目標を持つことは、個人の成長だけでなく、組織全体の活性化にもつながる重要な要素だからです。

では、なぜ多くのビジネスパーソンが目標を設定できないのでしょうか? そして、目標を持たないことで、どのような弊害が生じるのでしょうか?

本記事では、これらの疑問に答え、目標設定の重要性と、目標を設定できない部下をどのように指導すれば良いのかについて詳しく解説していきます。

Ⅱ 仕事の目標を持たないことの深刻な現状

1 目標を立てる、と言う茶番

株式会社HRBrainは、各企業で「目標進捗評価面談」が行う前の9、10月に、男女600名を対象にした「目標管理の実態と従業員の本音に関する意識調査」を実施しました。(2024年8月8日 HR大学「【独自調査】目標管理の実態 -約8割の会社員が経験する『名ばかり目標』とは?」https://www.hrbrain.jp/media/evaluation/research201809

その結果、以下のような傾向が見えて来たのです。

  1. 78.3%の会社員が面談や提出日直前になって、“その場しのぎ”の目標設定をしたことがあると回答
  2. 64.1%の人が、目標を意識できていない、もしくは一定の時期しか目標を意識していないことが判明

つまり簡単に言ってしまえば、社員のほとんどは「日常目標を意識していない」にもかかわらず、企業側は「それに気づかず(あるいは気づかないふりをして)目標管理を(形として)行っている」と言うことです。これは一種の茶番です。

結局、これは「社員は目標を持っていない」あるいは「自分の本当の目標が分からない」まま仕事をしているということです。

2 目標を持たないで仕事をする弊害

目標を持たないことは、個人にとっても、組織にとっても大きな損失です。目標がない状態では、仕事に対するモチベーションが低下し、パフォーマンスが低下する可能性があります。また、組織全体としても、個々の社員が目標を持っていない状態では、目標達成に向けた一体感が生まれにくく、結果として企業全体の成長が阻害される可能性があります。

Ⅲ なぜ目標を設定できないのか?その原因と解決策

なぜ彼らは目標を持つことができないのでしょうか?

1 目標を設定できない要因

その要因は大きく言って5つあります。

  1. 将来への不安: 社会人としての経験が浅いため、将来のキャリアパスが明確に見えない。
  2. 自己理解不足: 自分の強みや弱みを理解できていないため、目標を設定することが難しい。
  3. 情報過多: 多くの情報に振り回され、何を優先すべきか判断できない。
  4. 目標設定の経験不足: 学生時代など、目標設定の経験が少ない。
  5. フィードバック不足: 上司からのフィードバックが不足しているため、成長すべき点が明確になっていない。

これらの原因は、本質的には**「自己認識の低さ」「目標設定のスキル不足」**に集約されます。

2 目標を設定できるようにするための具体的な方法

目標を設定できるようにするためには、以下のステップを刻んで、着実に相手の反応を見ながら、改善を目指しましょう。

「自己認識の低さ」を改善する→「自己理解を深める」

「自己認識の低さ」とは、簡単に言うと、「自分がどんな人間なのか、客観的に理解できていない状態」 を指します。

もう少し具体的に説明すると、以下の様なことが挙げられます。

①自己認識が低い時に起きている状況
  • 自分の強みと弱みがわからない: 自分が得意なことや不得意なこと、長所や短所を客観的に把握できていない。
  • 自分の価値観がわからない: 何を大切にして生きているのか、どんなことに喜びややりがいを感じるのか、自分自身で明確に答えられない。
  • 自分の行動パターンがわからない: ストレスを感じた時にどう行動するのか、目標達成のためにどのような行動をとるのか、自分自身の行動パターンを理解していない。
  • 自分の能力を過小評価する: 自分の能力を過小評価し、できることをできないと思い込んでしまう。
  • 自分の能力を過大評価する: 自分の能力を過大評価し、現実と乖離した目標を設定してしまう。
「自己認識の低さ」によって発生する問題

自己認識が低いと問題が生じます。

  1. 目標設定が難しい: 自分の強みや弱みを理解していないため、自分に合った目標を設定することができない。
  2. キャリアパスが描きにくい: 将来のキャリアについて、具体的なイメージが湧かない。
  3. 人間関係がうまくいかない: 自分のことをよく知らないため、周囲の人とのコミュニケーションが円滑に進まない。
  4. モチベーションが低い: 自分の価値観と合わない仕事をしているため、モチベーションが低い状態が続く。

③「自己認識の低さ」の改善方法とは?

自己認識を改善するためには、以下の様な方法が考えられます。

  1. 自己分析: ストレングスファインダーなどの自己分析ツールを活用したり、過去の経験を振り返ったりすることで、自分の強みや弱みを客観的に把握する。
  2. フィードバックを求める: 上司や同僚にフィードバックを求め、自分では気づかなかった側面を知る。
  3. 読書や自己啓発: 自己啓発本を読んだり、セミナーに参加したりすることで、「気づき」のきっかけを得る。
  4. 経験を通して学ぶ: 様々な経験をしながら、経験の後には必ず自己の行動、言動を振り返り、自分自身を客観的に分析する。

④「自己認識の低さ」を改善することは、仕事だけでなく、人生全体を豊かにする上で非常に重要です。

もし、あなたが「自己認識の低さ」を感じているなら、ぜひ一度、自分自身と向き合い、自己理解を深めることを試してみてください。

⑵目標設定のスキルを身につける:

①SMARTな目標設定のフレームワークを学ぶ。

SMARTとは以下の目標設定のフレームのことです。この項目1つ1つを埋めていくことで、具体的で、実行すれば自社に貢献できると同時に、自分も成長する目標を建てられるのです。

  • Specific(具体的に)
  • Measurable(測定可能な数値化して)
  • Achievable(達成可能な)
  • Related(経営目標に関連した)
  • Time-bound(期限を明確にした)
②目標設定ワークショップに参加する。

目標設定ワークショップとは、参加者が集まり、それぞれが持つ目標を明確化し、達成するために必要な行動計画を立てるためのワークショップです。単に目標を立てるだけでなく、グループワークやディスカッションを通して、互いに刺激し合い、より効果的な目標設定へと導くことを目的としています。

目標設定ワークショップの目的
  • 自己理解の深化: 自分の強みや弱み、価値観などを再認識し、自己理解を深める。
  • 目標の明確化: 漠然とした目標を具体的な行動目標に落とし込む。
  • 達成するための計画策定: 目標達成のために必要なステップやスケジュールを立てる。
  • モチベーション向上: 目標達成への意欲を高め、行動変容を促す。
  • チームワークの強化: チームメンバー同士で目標を共有し、協力体制を築く。
目標設定ワークショップの流れ(例)
  1. アイスブレイク: 参加者同士が打ち解けるための簡単なゲームや自己紹介など。
  2. 目標設定の重要性について学ぶ: 目標設定のメリットや、効果的な目標設定の考え方などを学ぶ。
  3. 自己分析: ストレングスファインダーなどのツールを活用したり、ワークシートを用いたりして、自分の強みや弱み、価値観などを分析する。
  4. 目標設定: 個人で目標を設定し、シートにまとめる。
  5. グループワーク: 小グループに分かれて、お互いの目標を共有し、フィードバックし合う。
  6. 行動計画の策定: 目標達成のために、具体的な行動計画を立てる。
  7. 共有と発表: 各グループの代表者が、目標と行動計画を発表する。
  8. 振り返り: ワークショップを通して得られた学びや、今後の目標について振り返る。
③目標達成のために必要な行動計画を立てる。
  • 小さな目標から達成し、自信をつける。
  • 定期的に進捗状況を確認する。
  • 困難に直面した場合は、周囲、上司に相談する。
  • その為にチーム内は常にオープンマインドな環境を作る。問題がある時には、いきなり欠点を指摘するのではなく、アサーティブに発言できるようにする。つまり相手の気持ちを配慮しながら、相手が受け入れやすい言い方で、自分はこのようなことが問題点だとかんがえる、と「自分の考え」を開示する。

3 日常のマネジメントにおける具体的な行動

上司は、部下が目標を設定できるように以下の行動を心掛けましょう。またマネージャー職の部下がいる場合は、以下を具体的にどう自分のワークフレームに組み込むかの話し合いをしてください。

  • 定期的な1on1ミーティング: 部下のキャリアプランや目標について、定期的に話し合う機会を設ける。
  • 具体的なフィードバック: 部下の行動や成果に対して、具体的なフィードバックを与える。
  • 目標設定のサポート: 部下が目標を設定できるように、具体的なアドバイスやサポートを提供する。
  • ロールモデルとなる: 自身が目標を持って行動し、部下にとってのロールモデルとなる。

ただし最も重要なのは、問題点を指摘するミーティングやフィードバックには絶対にしない、ということです。それだけで、相手のモチベーションは限りなく下がり、目標を持つ以前の根本的な問題を抱えることになってしまいます。基本は、聴く→肯定する→ほめる→さらに良くするには(敢えて付け加えるとすれば)これをしてみたらどうか(あくまで命令ではなく「提案」の言い方、です。このことはマネージャーに徹底して下さい。もちろんその際にも、あなたが部下のマネージャーにこの方法を命令するのではなく、同じように聴くから入って提案に至る流れで、進めることを忘れないでください。

Ⅳ 結論

目標を持つことは、個人の成長だけでなく、組織全体の活性化にもつながる重要な要素です。しかし、多くの若手社員は、目標を設定することに困難を感じています。

目標を設定できない原因は、自己認識の低さや目標設定のスキル不足など、多岐にわたります。これらの問題を解決するためには、上司が部下の自己理解を深め、目標設定のスキルを向上させるためのサポートを行うことが重要です。

部下の成長を支援するためには、一人ひとりの個性や状況に合わせた指導が必要です。 本記事で紹介した方法を参考に、部下の目標設定をサポートし、組織全体の成長に貢献しましょう。

また以上からも分かるように、社員に目標を持たせ、それにコミットさせるということは大変困難な課題です。いくつもの人材開発スキルを組み合わせ、それを社員だけではなくマネジメント層も身に着けることが必要です。さらにそれらを社内の研修だけではなく、オペレーションの仕組みとして根付かせなければなりません。

そのようなことは自社でできない。そうお悩みの場合はぜひ私たちヒューマンパワー研究所にこちらからご相談ください。

御社に合わせたプログラムを用意し、かつそれを運営する側のマネージャー層への研修も含め、あるいは社内風土の問題とも絡めて、最適解をご提案し、実行のサポートを致します。これはどのパッケージを使えばいいという問題ではなく、完全に御社向けのオリジナルパッケージで行う必要があります。

ただ私たちがその場合、どのように御社のサポートをさせていただくか、は基本方針がありますので、こちらをご参照ください。