AIの人材開発と人事業務における活用可能性と注意点

AIは思ったよりも近い将来、あらゆる仕事を代行するようになるだろう。

Ⅰ「AI面接官」の登場と反響

2024年8月2日のYahooニュースをご覧になりましたか?採用面接へのAIの導入に関連した以下の記事が掲載されました。(内容はこちらの方で要約したものです。

AI面接官が変える採用プロセスの未来

AI面接官の登場

「学生時代に苦労や困難を乗り越えた経験はありますか?」この質問を投げかけたのは、人間ではなくスマートフォンの画面内にいる「AI面接官」です。近年、企業の採用プロセスにAI技術が導入されるようになり、AI面接官が面接官の役割を担うケースが増えています。対話型や面接動画の分析を通じて、候補者の回答を評価するシステムが広まりつつあります。

導入事例と機能

AI面接官の一例として、対話型AI面接サービス「SHaiN(シャイン)」が挙げられます。このサービスは、50以上の質問を通じて受験者の「状況」「課題」「行動」「結果」を評価し、「バイタリティ」「計画力」などの7項目に基づいてスコアを付けます。導入企業は、面接の効率化や客観的な評価を実現する一方で、初期選考段階での利用が一般的です。

企業と学生の反応

AI面接官を導入している企業では、面接の標準化や負担軽減が評価されています。例えば、ウシオ電機では移動の負担軽減を目的にAI面接を活用し、面接の公平性を高めています。しかし、学生の反応は賛否が分かれます。AIによる評価の公平性を歓迎する意見がある一方で、機械にデータとして扱われることに違和感や不安を抱く声もあります。

規制と課題

海外ではAI面接官の導入に対する規制が進んでおり、米国やEUでは安全性や公平性の確保に向けた法規制が導入されています。日本では、まだ包括的な法規制は整備されていないものの、企業には信頼性の高いデータ学習や公平性の担保が求められています。AIの判断の信頼性については、引き続き検討が必要とされています。

結論と今後の展望

AI面接官の導入により採用プロセスの効率化や標準化が進んでいますが、その信頼性や公正性には注意が必要です。AIの活用は、全体の文脈や人間の感情を理解するには限界があるため、最終的な判断は人間が行うべきという意見もあります。企業はAIを活用しつつも、透明性や公平性を確保するための取り組みを進める必要があります。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e09ead24ecfd11a37b9d0e316cbe644e9545bd0b?page=1

以上はAIを入社試験に利用している例です。この流れで人材開発の多くの業務が可及的な速度で今後AI化していくでしょう。具体的には以下のような分野での導入が考えられます。

AIの人材開発への応用

AI技術の導入は、入社面接だけではありません。人材開発や人事業務のさまざまな分野でも活用されています。特に次の分野での利用が期待されています。

1 AIによるスキル評価と適性診断

AIを用いたツールで、社員のスキルや適性を詳細に評価することが可能です。AIは、業務のパフォーマンスデータやテスト結果を分析します。そして個々の強みや弱みを明確にする手助けをします。これにより、パーソナライズされたトレーニングプラン作成。キャリアパスの提案が可能となります。

具体的なアプリケーション

LinkedIn
事業内容

LinkedInは、プロフェッショナルネットワーキングプラットフォームです。ユーザーが履歴書や職務経歴書を作成し、求人情報を提供しています。また、企業はLinkedInを利用して求人広告の出稿、スカウトに活用しています。

AI活用

LinkedIn Skill Assessmentsは、ユーザースキルを評価します。するテストを提供します。応募者が特定のスキルテストを受けると、結果がプロフィールに反映されます。リクルーターはそれを採用の有力な参考にできます。

導入企業

IBM

利用内容: IBMはLinkedIn Skill Assessmentsを採用時に必ず実施しています。求職者の能力をより正確に把握し、適切な人材を選定しています。

Pymetrics
事業内容

Pymetricsは、ゲームベースの適性診断を通じて、求職者の認知能力や性格特性を評価するサービスを提供しています。企業はこのサービスを使って、候補者の適性を測定し、最適な人材を選定します。

AI活用

ゲームで得られたデータを分析し、候補者の適性を評価します。これにより、バイアスを排除し、公正な評価を実現します。

導入企業
  • Unilever
    • 利用内容

UnileverはPymetricsのゲームベースの適性診断を使用します。て、候補者の認知能力や性格特性を評価し、より客観的な採用決定を行っています。このシステムにより、従来の面接プロセスを補完し、多様な才能を見つけ出しています。

2 AIによるトレーニングと学習支援AI

学習プラットフォームもAIを活用し、社員の学習進捗をリアルタイムで把握します。その上で適切な学習コンテンツやリソースを提供します。例えば、AIベースのチャットボットがトレーニングの質問に答える。オンライン学習のアダプティブテクノロジーが教材を提供します。それは個々の学習スタイルに合っています。

具体的なアプリケーション

❶Coursera
事業内容

Courseraは、オンライン教育プラットフォームです。大学や企業が提供するコースを受講できるサービスを提供しています。「Coursera for Business」は企業に応じた学習リソースを提供します。

AI活用

CourseraのAIは、学習者の進捗やパフォーマンスを分析します。そしてパーソナライズされたコースや学習リソースを推薦します。これにより、学習者に最適なコンテンツを提供し、学習効果を高めます。

導入企業
  • Google
    • 利用内容: Coursera for Businessは社員活性化、能力向上、昇格意欲醸成役立ちます。Courseraのオンラインコースを提供は以下を実現します。社員の専門知識強化。業務に必要なスキル習得。
Udacity
事業内容

Udacityは、テクノロジー分野に特化したオンライン教育プラットフォームで、特にデジタルスキルの習得を目的とした「Nanodegree」プログラムを提供しています。企業向けには、トレーニングやスキルアップのプログラムを提供しています。

AI活用

UdacityのAIは、受講者の学習進捗を追跡し、個々の学習者に合わせたサポートやフィードバックを提供します。これにより、学習体験をパーソナライズし、スキル習得の効果を高めます。

導入企業

AT&T

利用内容: AT&TはUdacityの「Nanodegree」プログラムを導入し、社員にテクノロジー分野のスキルを提供しています。これにより、社内のスキルギャップを埋め、業務の効率化を図っています。

3 AIによるパフォーマンス評価とフィードバック

AIは、社員のパフォーマンスデータを分析し、定量的かつ客観的なフィードバックを提供することができます。これにより、評価の一貫性を保ち、評価者間のバイアスを減少させることができます。

具体的なアプリケーション

❶Betterworks
事業内容

Betterworksは、パフォーマンス管理と目標設定のための企業向けプラットフォームを提供しています。社員のパフォーマンスを追跡し、目標設定やフィードバックのプロセスをサポートします。

AI活用

BetterworksのAIは、パフォーマンスデータを分析し、定量的かつ客観的なフィードバックを提供します。これにより、マネージャーと社員が目標設定やパフォーマンス評価を行う際の参考になります。

導入企業

Dropbox

利用内容: DropboxはBetterworksを使用して、社員のパフォーマンスを継続的に管理し、目標設定やフィードバックのプロセスを最適化しています。AIによるデータ分析を活用して、パフォーマンス評価をより精度高く行っています。

Reflektive
事業内容

Reflektiveは、パフォーマンス管理とフィードバックを支援するプラットフォームを提供しています。定期的なフィードバックと目標設定を通じて、社員の成長を促進します。

AI活用

ReflektiveのAIは、社員の業務データを分析し、パフォーマンスレビューやフィードバックのプロセスをサポートします。これにより、パフォーマンス管理を効率化し、より有効なフィードバックを提供します。

導入企業

Cisco

利用内容: CiscoはReflektiveを利用して、社員のパフォーマンス管理を行っています。定期的なフィードバックと目標設定をサポートすることで、社員の成長を促進し、業務のパフォーマンス向上を図っています。

AI導入時の注意点

1 データの信頼性とプライバシー

AIによる人材評価やトレーニングでは、大量のデータを扱いますが、そのデータの正確性とプライバシーの保護が重要です。データが偏っていたり、不正確であったりすると、評価の信頼性が損なわれる可能性があります。また、個人データの取り扱いには法規制や倫理的配慮が必要です。

2 バイアスの排除

AIシステムが学習するデータにバイアスが含まれていると、その結果にもバイアスが反映される可能性があります。例えば、過去のデータが特定の属性の社員に偏っている場合、AIもその偏見を学習してしまう可能性があります。AIの設計と運用においては、バイアスの排除に努める必要があります。

3 人間との連携

データに基づく分析を行うAIに対し、人間の判断には直感や感情が含まれることが多いです。AIの提供する情報や提案をそのまま採用するのではなく、最終的な判断は人間の管理者が行うべきです。AIの活用は補助的な役割であり、意思決定の全てをAIに委ねるべきではありません。

4 技術的な限界

AIはあくまでツールであり、その性能には限界があります。特に、複雑な感情や状況を理解する能力には限界があるため、AIだけに依存せず、人間の感受性や判断力も活用することが重要です。

結論

AIは人材開発や人事業務において多くの可能性を秘めていますが、その導入には慎重な配慮が必要です。データの正確性やプライバシー、バイアスの排除、人間との連携といった点に注意しながら、AIを効果的に活用することで、より良い人材開発と人事業務の実現が可能となります。

今後人材開発、人材採用についてお悩みの企業様、ご担当者様はぜひ私たちヒューマンパワー研究所までご相談ください。AI導入時の問題点、あるいは最適な導入方法などどのようなことでもお応えいたします(必要に応じて、他のベンダーも巻き込んだサポート体制を構築します)。ご相談はこちらまでお願いします。

そのほか、そもそもAIは手段であって、目的は柔軟で筋肉質の組織の企業になるにはどうしたらいいのか、ということだと思います。弊社ではそのような取り組みもしておりますので、ご参考までにこちらもご覧ください。