コーチングの成功・不成功は相手の「地頭」次第
相手から答えが出るのは、相手に「自分で考える力」があるから
「コーチング」の根本のスキルは「オウム返し」です。つまり相手が
「最近調子悪いんです」
といったら「そうなんだ、悪いんだね」
と相手の言葉を繰り返すのが「オウム返し」です。「コーチング」理論の根幹は、オウム返しによって自分で考えさせることです。上の例で言えば
「調子が悪いのは、仕事を広げ過ぎてどれも中途半端だったからなんですね!」
と答えを自分で自分の中から発見する、ということです。
しかし実はこのスキルが上手くいくには「必須条件」があります。それは「相手に考える力がある」ということです。言葉を換えれば「地頭」がいいのです。
地頭が悪い人間は何も答えが出せない
上のようなコーチングのほとんどの現実は、
「そうなんです」
しか相手から返って来ないことです。そこで会話は終わってしまい「…」と気まずい沈黙になるだけです。
仕方なくコーチャーは
「中途半端っていうのを具体的に言うと、どの仕事ができていないってことかな」
「今できている仕事はあるのかな」
「今できている仕事とできていない仕事の数を比べてみたらどうかな」
などと質問して「仕事の幅を広げ過ぎていた」ということに「気づかせます」。注意していただきたいのは、これは「気づく」はなく「気づかせる」という使役形だということです。
言葉を換えれば「誘導尋問」です。
コーチャーが答えを知っており、うまく質問をして、相手がそこにたどり着くようにしているだけです。しかし相手は「誘導尋問された」ことにも気づきませんから「自分で答えを出したような気になる」のです。
これは「コーチング」ではありません。
にも関わらず「コーチング」を万能のカウンセリングスキルのように扱って、協会を作り、ライセンス制を設けて会費や数段階のライセンス料、そして講習を行っている「コーチング会社」は、私見では「サギ」だと思います。
「地頭がいい」人は全体の3割
ほかのパターンもあります。
1つは自主的に答えを見つけ出しますが、レベルが低い、あるいは的外れで実践しても成果が出ないことが容易に予想できる場合、です。
「わかりました!今の成果でも十分、ということですね!」
などの答えがそれです。さらにひどい場合は
「・・・・」
と相手が完全に沈黙してしまうことです。誘導尋問をかけても何も相手から出て来ずに、最後はコーチャーが答えを相手に与えることになります。
このような人ははっきり言って「地頭」が悪いのです。おそらく全体の4割は「自分で誤った答えを出す」、3割は「全く何も出ない」人でしょう。
つまりコーチングをして効果が上がる「地頭のいい人」は平均して全体の3割なのです。
「コーチング」が万能だという落とし穴
多くのコーチング導入を試みて失敗している企業様は、以上のような「コーチングのカラクリ」をご存じないのです。
上手く行かなくて当たり前の人材にコーチングを行い、やはり上手く行かない結果を見て、ご自分たちに「上手くコーチングを実践するスキルがない」と誤解しているのです。
それを裏返すと「コーチングは万能」だという誤解がありということです。
しかしここでコーチングを諦めればまだ傷は浅いですが、何せ「コーチングは万能」という誤解を持っています。やはりプロに頼もうと、高い講師料を支払って「コーチング研修」を実施する。これも料金が異常に高いコーチャー養成講座に人事部員を何人も送り込む。などで無駄な出費を重ねてしまう企業様も少なからずあるでしょう。儲かるのは「サギ」をしている「コーチング」会社だけです。
せっかく導入しても失敗。「やり直しコーチング」で挽回を
理念として優れているコーチング
ここで完全にコーチング導入を断念する、というのも1つの判断でしょう。私たちにご相談いただければ、「SARC」研修によってと社員様、お子様のやる気を引き出し、成長につなげることも可能です。
しかし1つだけ惜しいのは、コーチングの理念自体は非常に素晴らしい、ということです。
つまり「答えは相手の中にある」というものです。
この理念は私たちも賛同しているので、今挙げた「SARC」研修や「やる気カウンセリング」の中で、コーチングのスキルは使うべきタイミングを選んで使っています。
それに恐らく「コーチング」会社に貢いでしまった(と敢えて申し上げますが)金額も相当でしょうから、ここで止めるということもできにくい場合もあるでしょう。
そのような方にお勧めしたいのが「やり直しコーチング」です。
「やり直しコーチング」は「コーチング」を使った組織マネジメント
先ほど書いたように「コーチング」が有効なのは地頭がいい、全体の3割の人です。この人たちには「コーチング」をして、どんどん「気づき」と「学び」を起こし、成長してもらいましょう。きっと将来、会社の基幹社員になるに違いありません。
問題は残りの7割の人への対応です。「何もしない」という選択もありますが、人は意外なほど細かく「自分が認められているか」「自分が公平に扱われているか」ということを観察しています。
当然、3割の人にだけ上司が特別な接し方をしているということも敏感に察します。これはチームまたは組織の中にある種の「人種差別」を発生させますので、間違いなく雰囲気を悪くするでしょう。
その結果7割の人へのマネジメントが全く効かなくなり、同時に組織の雰囲気自体、非常に悪くしてしまう危険性があります。
そこでその人たちにも、一定の接し方をするのです。
「やり直しコーチング」とは、この地頭の良い3割の人への接し方と、それ以外の7割の人への接し方をセットで身に付ける、という組織マネジメント手法なのです。