「うちの社員はモチベーションが低い」。「A君は能力はあるが、やる気が感じられない」。そんなお声をよく聞きます。
その背景には「モチベーションを持つのは良いことだ」という常識・公理があるようです。
果たして本当にモチベーションを持つのは良いことなのでしょうか。
モチベーションが高い人は2倍の成果を上げる。
右の図をご覧ください。
与えられた仕事は普通にこなす、仕事に「満足している」社員を仮に100%とします。その時「やる気に溢れる」社員、モチベーションが高い社員の生産性は225%です。つまり2.25倍です。
「満足していない社員」「モチベーションが低い」社員は71%です。比較すると、3.16倍です。
つまり「モチベーションの高い人間ほど成果を上げられる」。という、何となく感じていることはデータで証明されているのです。
仕事だけでなく、学業、家事など全てにおいても同じです。生産性を上げたい、どんどん進めたいなら、まず「モチベーション」です。「モチベーションを上げる=やる気にする」必要があるのです。
モチベーションの高い人間は多いのか?
しかし、現実を見ると「モチベーション」の高い人間はそれほど多くありません。
左図はPwCが実施した「グローバル従業員意識/職場環境調査」(2023)です。ご覧のように「非常にやる気がある」人は全体の29%。つまり「本当に仕事に燃えている人は3割しかいないのです。
ただ激励してもモチベーションは上がらない
ですから、社長、役員あるいはマネージャーであるあなたが社員様に「もっと頑張れ!」と檄を飛ばしても、あるいはお子様に「勉強しなさい!」と叱っても、その通りに頑張って成果を出す人は3割しかいない、ということです。
この事実を前にしてあなたは気が抜けてしまうかも知れません。
しかも実はモチベーションが上がらない理由は「あなたに」あるのかも知れないのです。
「ニンジンで釣る」ことは有効か?
誰かを頑張らせたい時に「できたら賞金を上げる」。「昇進させてあげる」。「欲しいものを買ってあげる」という約束をしていませんか。これはよく「馬をニンジンで釣る」と言われていますね。
このように外からの刺激でモチベーションを上げることを「外発的動機づけ」と言います。
ニンジンで釣るのと反対に、できなかったらひどく叱る」。「降格させる」「クビにする」。あるいは「家から追い出す」「できるまでご飯を食べさせない」。こういう脅しも「外発的動機づけ」です。
自分の中から湧きあがる「モチベーション」もある
一方で「医者のいない村の悲惨さを知り将来は医師になろう」と思う子供がいます。その子は誰からの励ましも、叱責も、なにかの賞品ももらいません。でも自分から懸命に勉強をして医学部に行き、医師になって寒村に赴任するでしょう。
高校2年生になって自分の成績の悪さを初めて受け止めた人もいます。彼はこのままでは生活費の稼げない人間になる、と思います。そして高校を中退し、ペンキ屋に弟子入りしました。
どちらの場合も共通しているのは、誰から言われたわけでもないということ。自分で目標を決め、それに向かって努力したという点です。
この自分の中で自然にモチベーションを上げる要素を「内発的動機づけ」と言います
内発的動機づけと外発的動機づけはどちらが良いのか?
この2つの動機づけのうち長続きするのは「内発的動機づけ」です。
たとえば今月の売上が部署で1位になったら、主任昇格させよう約束したとします。つまり外発的動機づけです。
すると相手は朝から晩まで営業活動をして見事目標を達成するでしょう。あなたは昇格したのだから、もっと頑張るだろうと期待しますよね。しかし今度は主任のポジションに満足してしまうのです。そして以前ののんびりした仕事ぶりに戻ってしまうでしょう。。
モチベーションが長続きする内発的動機づけ
一方で自分の会社の営業戦略の無策さに危機感を持ち、もっとこうしないと会社はつぶれてしまうぞ、と問題意識を持つ人もいます。彼は誰の指示でもなく、新しい営業スタイルを考えるでしょう。自分で宣伝ツールを作り、顧客へのアプローチ法も考え、結果的に部門で1位になるでしょう。そしてやはり主任に昇格しますが、彼はそれで満足しません。引き続き研究と実践を繰り返すはずです。
つまりずっと彼の「内発的な」モチベーションは持続しているのです。
右は「研究者」のモチベーションと、その成果としての特許数の相関を示したグラフです。
互いの相関が強いのは「科学技術への貢献」「困難な研究課題解決」「研究環境改善」などの「内発的動機づけ」です。弱いのは「自身のキャリア」「金銭的報酬」など「外発的動機づけ」です。このグラフはより強くコミットして長続きするのは「内発的動機づけ」だと示しています。
「気づき」「学び」が重要
つまり「外発的動機づけ」は報酬がなければすぐに効果がなくなります。一方で「内発的動機づけ」は基本的にいつまでも持続します。
ですから教育や日常指導で重要なのは
- 「指摘して分からせる」ではなくて「気づき」を導く
- 「教える」のではなく本人の「学び」を起こす
ことなのです。私たちの研修プログラム、組織改革メソッドはこの理論をベースに開発されています。
モチベーションについて重要なポイントはもう1つあります。
それは次のページでご紹介しましょう。